自己破産をするとどうなる?
借金の返済が滞ってしまい、目途も立たなくなってしまった場合に、返済額を減らす手続きを行える債務整理。
なかでも自己破産はいくつかある債務整理の種類の中で唯一借金を0にできる手段です。
基本的に、破産の状態とは財政状況が悪化して借金返済が不能となった状態のことをいいます。
そして、自己破産の手続きとは、多額の負債を抱えて債務者が経済的に破綻をしてしまった場合に、その財産を清算して、すべての債権者に対して公平な弁済をすることを目的にした裁判上の手続きをいいます。
免責が確定すれば、基本的にそれ以降は債権者は取り立てができなくなりますので、どんなに状況を見直しても返済ができないと判断した場合に考慮したい手続きです。
ほとんどの場合、弁護士に相談して自己破産の手続きをすすめていきますが、債務整理を専門とする弁護士は、多くの実務を経験していることから、個人再生手続きのコツ、任意整理手続きのコツ、自己破産手続きのコツを把握しており、臨機応変に対応してくれます。
どうしても住宅を残したいという願望の強い債務者に対しては個人再生、借金返済があきらかに困難な場合は、自己破産の申し立てをすすめてくれるでしょう。
自己破産に向いている人
債務整理はまず借金額を減らして完済を目指すことを考えていく手続きですが、定期収入がない、返済額が多すぎるといった場合の最終手段として自己破産が行われます。
没収されるような財産もほとんど持っておらず、お金を作れるあてもないという人、他のどのような債務整理の方法を考えても返済が難しいと判断された場合に、手続きを開始するのがおすすめです。
自己破産を申立てれば借金はすべて帳消しとなるか
免責された場合の流れ
裁判所から免責決定を受けると、裁判所から免責決定通知書が交付されます。
告知があった日から1週間以内に即時抗告がなければ免責が確定し、債務者は借金返済の義務から解放され、債務整理が完了することになるのです。
免責が確定すると、それまでは破産者とされていた債務者は復権することができるため、公私の資格制限からも解放され、一度は登録された破産者名簿からも抹消されます。
ただし、自己破産で免責を受けた場合でも、滞納している税金は免除されません。
また、複数の信用情報機関のブラックリストには5年間から10年間にわたって登録されてしまうため、住宅ローンやカーローンといった新たな借金はできなくなりますし、クレジットカードも作ることができなくなります。
免責不許可で自己破産ができないことも
個人が自己破産を申立てるケースでは、消費者金融からの借金額が膨れ上がったり、クレジットカードの使い過ぎによって負債が膨れ上がったりとさまざまです。
しかし、借金返済が困難となった場合でも、免責が不許可となるケースも存在します。
ただし、免責は債務者に再出発のチャンスを与え、救済するための制度なので、その必要がない人に対して免責は認められません。そこで法律では免責不許可事由を定めています。
おもな自己破産の免責不許可事由は下記の通りです。
- 申立人が債権者の利益を直接害した場合
- 破産者が財産を隠したり、その財産的価値を減少させた場合や、返済不可能な状態であるにもかかわらず、その状態ではないかのように債権者を信用させて、さらに借金をした場合など
- 手続きの円滑な進行を妨げたり、間接的に債権者の利益を害した場合や、説明義務を尽くさなかった場合
- 嘘の事実を記載した債権者一覧表を裁判所に提出したり、財産状態を偽って陳述したような場合など
- 浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担した場合
- クレジットカードで商品を購入後、すぐに安い値段で業者などに転売したり、質入れして現金化した場合
- 免責の申立をする以前の7年間に、自己破産の免責決定を受けていた場合
このような場合は、自己破産ができないので注意しましょう。
自己破産のデメリットは?
自己破産は債務者に再出発のチャンスを与え、救済するための制度ですが、デメリットも存在します。
ブラックリストに個人情報が載る
自己破産だけに限りませんが、債務整理を行うことで信用情報機関に登録されることになります。
その結果、新たにクレジットカードを作ったりローンを組んだりする際の審査が通りにくくなるため、自己破産後は5年から10年程度、これらの利用を諦めなければなりません。
不便だからといって、家族名義のクレジットカードを利用することも禁止されています。クレジットカードの代わりに審査の必要がないデビットカードを利用するなど工夫をして、生活の中で活用していくのがコツです。
財産が没収されてしまう
自己破産をした場合、借金が0になる代わりに所有している一定以上の財産が没収されてしまうというのが大きなデメリットです。
今後の生活にも影響が出てくる変化ですから、手続きの前にはどういったものを手放さなければならないのか、きちんと把握しておくことが必要になります。
【没収される財産の例】
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える残高がある預貯金
- 不動産
- 車やバイク
- 貴金属
資産として判断されるものは多岐に渡っていて、その基準は裁判所によっても異なってきます。没収しても生活に支障がないと考えられるものは、まず手元に残せないと考えておきましょう。
連帯保証人がいる借金に対する自己破産
自己破産の手続きは、連帯保証人のいない借金に対して行うのが迷惑をかけないコツです。
保証人がいる場合には自己破産した人の代わりに債権者への支払い義務が生じてしまいます。
相談先の弁護士が申し立てを行う前に必ず確かめてくれますが、くれぐれも連帯保証人に責任を負わせないよう慎重な判断が必要です。
免責許可が下りるまで職業制限がかかってしまう
自己破産の手続きが始まり免責許可が決定するまでの期間は、弁護士や行政書士などの法律に関わる職業や警備員、保険外交員など、特定の職業は仕事ができなくなるので、該当する方は注意が必要です。
ただし、免責が決定すれば復職が可能になります。
自己破産をした後はどんな生活になるのか
さまざまな誤解も生じている自己破産後の暮らし
自己破産に関しては世間的な誤解も多く、「選挙権がなくなってしまう」「戸籍に自己破産したことが書かれる」「年金がもらえなくなってしまう」などと噂されていますが、こういったことは一切ありません。
まず手続きを行っても周囲の人に知られてしまうリスクはほぼなく、資産を没収されて新たに借金ができなくなる程度で、自己破産をしたからといって受ける制約は日常生活を送れないほど厳しいものではないと言えます。
保証人になっていない限り自己破産をしても家族に迷惑はかからない
自己破産による影響があるのは破産手続きを行った本人のみですので、保証人になっていない限りは家族に直接的に迷惑をかけることはありません。
ただ、自己破産をした人の名義になっている資産が没収されれば、家族で利用している持ち家や車などを処分することにもなります。
それによって引越しなどを余儀なくされる可能性は大いにあるので、家族がいる場合は前もって相談をして慎重に検討する必要が出てくるでしょう。
自己破産をしても生活必需品と一部の財産は残せる
自己破産はあくまで生活再建のために行うものなので、手元には生活必需品や生活のために必要となる財産を残しておくことができます。
住む場所や食費など、生きていくために必要なものまで没収されてしまい、一文無しになってしまうということはありません。少々の不自由は余儀なくされてしまいますが、最低限の衣食住の保証はされています。
その中で生活を立て直していくためのコツは、残された財産を大切にし、無駄遣いをしないように収入と支出をしっかりと管理していくことです。
家計簿を作成し、ある程度制限される生活の中で、同じ過ちを繰り返さないように正しい金銭感覚を身につけていきましょう。